人口1億人規模のベトナムは、日本企業にとって有望な海外市場の一つです。
経済成長に伴う消費の拡大、ECプラットフォームの普及、小売店舗の近代化など、消費者を取り巻く環境は急速に変化しています。
ベトナム国家統計局によると、2026年1〜9月のGDP成長率は前年同期比9.01%。同期間の小売・消費サービス売上も名目で13.4%増加しました。
しかし、市場全体が成長していることと、自社の商品が売れることは別の問題です。
ベトナムの消費者は何を重視し、どこで商品を知り、何を基準に購入するのでしょうか。
本記事では、2026年の最新統計と消費者調査をもとに、ベトナム消費市場で押さえておくべき5つの変化を解説します。さらに、日本の食品・飲料・化粧品・日用品メーカーが市場参入を検討する際のポイントを整理します。

変化①|市場は成長している。しかし、消費者の購買力を過大評価してはいけない


2026年の消費市場は拡大を継続
ベトナム国家統計局の発表によると、2026年1〜9月の小売・消費サービス売上は約5,925.7兆ドンに達しました。
前年同期比では名目13.4%増と、高い成長率を維持しています。
一方、物価変動の影響を除いた伸び率は7.8%です。また、同期間の消費者物価指数(CPI)は前年同期比平均4.52%上昇しました。
指標 2026年1〜9月
GDP成長率 +9.01%
小売・消費サービス売上(名目) +13.4%
同売上の物価影響除外後の伸び +7.8%
消費者物価指数(CPI) +4.52%
出典:ベトナム国家統計局・2026年1〜9月経済統計、同・消費者物価統計
日本企業にとっての意味
注目すべきは、名目売上の伸びと、物価影響を除いた伸びに差があることです。
消費市場は拡大していますが、数字上の成長がそのまま各家庭の購買余力の増加を意味するわけではありません。
さらに、ホーチミンやハノイなどの大都市と地方では、生活環境や所得水準、販売チャネルも異なります。
VENTRAでは、市場参入を検討する際、国全体の成長率だけで判断するのではなく、販売したい商品を実際に購入できる消費者が、どの地域に、どれだけ存在するのかを確認することが重要だと考えています。


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変化②|「品質が良ければ売れる」から「価格に見合う価値があるか」へ


ベトナム消費者は価格に敏感
PwCが2025年に発表した消費者調査では、ベトナムの回答者517名のうち、47%が食品の購入時に価格を主要な判断基準と回答しています。
一方で、同調査では74%が超加工食品や農薬について強い懸念を示しました。
つまり、消費者は単純に安さだけを求めているわけではありません。
家計への負担を意識しながら、安全性や品質も重視するという、複数の条件を同時に満たしたい購買行動がうかがえます。
出典:PwC「Voice of the Consumer Survey 2025 – Vietnam」
日本製品の評価は高いが、価格が購入の壁になる
2026年6月に公表されたネオマーケティングの調査では、ハノイ・ホーチミンの18〜49歳150名において、日本製品・サービスへの今後の購入意向は98%でした。
しかし、日本製品を購入する際の障壁として、62%が「価格が高い」と回答しています。
この結果は、日本ブランドへの好意が必ずしも購買につながるわけではないことを示唆しています。
※本調査は都市部の150名を対象としたもので、ベトナム国民全体の購入意向を示すものではありません。
出典:ネオマーケティング「ベトナムにおける日本ブランド認識・購買実態調査」
日本企業にとっての意味
日本メーカーは、品質や技術力を商品の強みとして訴求できる可能性があります。
しかし、輸送費、関税、流通マージンなどを加えた最終販売価格が、現地の競合商品と大きく離れてしまう場合、購買の障壁になり得ます。
そのため、輸出価格だけでなく、現地の店頭価格を想定したうえで、商品の容量・パッケージ・訴求方法を検討することが重要です。
例えば、価格を抑えた小容量の商品や、機能・品質の違いが伝わる説明を用意することが考えられます。
ただし、どの価格帯が受け入れられるかは商品カテゴリーによって異なるため、現地での価格検証が必要です。


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変化③|ECが急拡大。TikTok Shopが購買チャネルとして存在感を高める


オンラインショッピングは重要な販売経路に
2026年のベトナム消費市場で、大きな変化の一つがECの存在感です。
市場調査会社Cimigoが紹介したYouNet ECIの集計によると、2026年上半期の主要4ECプラットフォーム(Shopee、TikTok Shop、Lazada、Tiki)の流通総額(GMV)は約264.8兆ドンに達しました。
同集計における流通総額のシェアは、Shopeeが54.5%、TikTok Shopが43.4%です。
両プラットフォームだけで約98%を占めています。
※上記はYouNet ECIによる主要4プラットフォームの集計であり、ベトナムのEC市場全体のシェアではありません。
出典:Cimigo「Vietnam e-commerce 2026: Media and shopping trends」
商品との出会い方が変化している
従来の商品購入では、店頭で商品を見つけたり、知人の紹介から購入したりする行動が重要でした。
現在は、SNS上の動画や商品レビュー、オンライン検索などを通じて商品を知り、そのままECで購入できる環境が広がっています。
特にTikTok Shopでは、商品紹介動画やライブ配信と購入機能が結びついています。
一方、口コミや実店舗の影響力が失われたわけではありません。
日本製品に関するネオマーケティングの2026年調査でも、新しい商品・ブランドの情報源として、友人・家族などの口コミが78%、Googleなどの検索エンジンが68%、Facebookが67%と高い割合を示しています。
日本企業にとっての意味
日本メーカーがベトナムに商品を投入する場合、ECは販売だけでなく、商品に対する反応を確認する接点にもなり得ます。
商品の見せ方、価格、消費者からの質問、レビューなどは、現地ニーズを把握するための参考情報になります。
ただし、ECで注目を集めることと、安定した販売事業を構築することは同じではありません。
広告費や販売手数料、物流費を含む採算性の確認に加えて、継続して購入される商品であるかを見極めることが大切です。


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変化④|スーパー・コンビニが拡大。それでも伝統的小売は重要


ベトナムの流通市場は多様化している
ベトナムの街には、昔ながらの市場や個人商店に加え、スーパーマーケット、ミニスーパー、コンビニエンスストアなど、多様な販売チャネルが存在します。
近年は近代的小売の拡大が進み、特に食品・日用品分野では、消費者の利便性を重視した店舗展開が注目されています。
2026年8月に公表されたGuotai Haitong Securities Vietnamの消費セクター分析でも、食品や日用消費財を中心に、近代的小売チャネルの存在感が高まっていることが指摘されています。
一方、PwCの消費者調査では、食料品購入において伝統的なチャネルが依然として重要であり、実店舗とオンラインを組み合わせた購買行動もみられます。
出典:Guotai Haitong Securities Vietnam・2026年上半期消費セクター分析
商品によって最適な販路は異なる
例えば、輸入食品を販売する場合でも、高価格帯のスーパーマーケットに適した商品と、日常的な食品購入に適した商品では、必要な販路が異なります。
美容製品であれば、美容専門店、EC、サロンなども販売先の候補になります。
日用品の場合は、スーパーマーケットや家庭用品専門店、ECなどを比較する必要があります。
こうした販売チャネルには、それぞれ異なるバイヤー、流通業者、販売条件が存在します。
日本企業にとっての意味
市場参入の初期段階で、いきなり全国の量販店への導入を目指す必要はありません。
まずは商品との相性が良い販売チャネルを選定し、小規模な導入を通じて、販売数量や消費者の反応を確認する方法が考えられます。
どの店舗に置けるかだけでなく、どの店舗で消費者が実際に買うのか。
この違いを理解することが、持続可能な販路開拓につながります。


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変化⑤|日本ブランドへの信頼は強い。しかし「安心して購入できる仕組み」が重要に


日本製品に対する評価と購入の間にはギャップがある
先述のネオマーケティングの調査では、日本ブランドへの好意度は高い一方、購入をためらう理由として以下の回答が挙がりました。
日本製品の購入障壁 回答割合
価格が高い 62%
偽物・模倣品への懸念 55%
どこで購入できるかわからない 27%
出典:ネオマーケティング・2026年調査
特に注目したいのが、偽物への懸念と購入場所のわかりにくさです。
商品そのものに興味があっても、正規品か判断できなかったり、信頼できる購入先がわからなかったりすれば、購買の障壁となる可能性があります。
日本企業にとっての意味
日本メーカーに必要なのは、日本製というイメージに頼ることだけではありません。
現地の消費者が安心して商品を選べるよう、正規販売先を明確にし、商品情報を現地の言語で伝え、価格や販売条件に一貫性を持たせることが重要です。